プロジェクトスクール@3331レクチャーvol.10

リノベーションまちづくり


プロジェクトスクール@3331 第2期、第10回目の講義は、らいおん建築事務所代表取締役であり、全国各地でリノベーションスクールの講師を務められている嶋田洋平さんにお越しいただき、「リノベーションまちづくり」をテーマにお話を伺いました。
大館の地域資源リサーチプログラムで、そろばんを弾くことの重要性を教えてくださった嶋田さん。「継続するためには稼ぎを立てなければならない」という言葉を裏付ける各種の取り組み事例について、お金の仕組みも併せてお話を伺いました。

【実施概要】

日 時: 11月14日(月)

講 師: 嶋田 洋平 氏(らいおん建築事務所代表取締役)

参加生徒数: 21 名

 

『利用の構想力』 建築は箱から場の産業へ

「僕は建築事務所を営んでいますので、今日は建物のハードの話が多くなります。しかしそれは、建築のデザインどうこうではなく、『使われていない空間の新しい使い方を考えることで、周辺のエリアの価値を上げて、まちを再生する』ことについてです。再生するために、インパクトを与えるプロジェクトをつくるのですが、その事例
をいくつか紹介したいと思います。」(嶋田さん)

嶋田さんが今回の講義で紹介してくださったのは、空き家になってしまう分譲マンションの一室、10年以上空き店舗だらけの飲食店長屋、破綻しそうな商店会、偶然取得した鉄骨造の空き家など、行く末が心配になってしまいそうな物件ばかり。

「建物の所有者と利用者だけでは利活用はなかなか進みません。僕がやっているのはその間に立って活用案を示し、実施すること。『利用の構想力』とは東京大学の松村教授の言葉ですが、建築は今、箱から場の産業に変化しています。有り余る箱(建物・空間)の中に、どのように場をセットするのか、その構想力が問われているんです。僕の場合、物件をみて『こんな風景が実現できたらいいなぁ!』ととにかく妄想し、しっかりロジックを組み立てて、構想に仕上げていきます。」(嶋田さん)

 

組織のリノベーション


嶋田さんのリノベーションの対象は建物に限りません。
「数年間、住んでいる地域の商店会の会長を務めたことがありました。組織の経営状況が芳しくなく、何か手を打たねばなと。まずは地域でもっとも盛り上がる、ハロウィンイベントの財務状況を補助金に頼らない健康的な状態にしようと、色々試みた結果、2年間で依存を抜けられたんですね。この他、近隣で行われているイベントのお客さんがこちらにも回遊できるよう、軒先を使ったフリーマーケットも行いました。地道な広報活動やコンセプトへの共感を呼ぶプロモーションで経営状況も改善。やる気があれば、補助金まみれの組織も民間ビジネス発想で変えることができるんです。」(嶋田さん)

 

“ほしいパン屋は自分たちでつくる”

偶然入手した借地権の物件の利活用事例では、「パン屋理論」がキーワードに。「自分たちのほしいものが、自分たちの暮らしの近くにある」ことがまちの価値を決めるのであれば、それを自ら作り出すことで、物件の価値(家賃)、ストリートの価値、エリアの価値を高めることができるのではないか、という非常に明瞭なロジックです。この考え方で作られたのが「神田川ベーカリー」でした。

「神田川ベーカリーは僕とらいおん建築事務所のスタッフが共同出資して会社にしました。店舗設計に携わるだけではなく、自らリスクをとって事業をやってみることで、身を以て実に様々なことを学びます。経営、製造、販売の視点を養うことは、必ず本業のリノベーションや設計に役立つと考えています。」(嶋田さん)

著書のタイトル同様、「ほしい暮らしは自分でつくる」ため、お金が流れる仕組みの後ろ盾をしっかり持ちながら事業を果敢に打ち立てていく嶋田さん。プロジェクトで生きていくとはこういうことなのかもしれないと、勇気とヒントをいただきました。

 

Topic:
プロジェクトを自ら作り出し、
自分の仕事は自分で作り出せる人になってほしい

「そもそも設計は、建物を建てたい人がいて初めて成り立つ仕事です。しかし現在、地価が下がり、経済合理性で考えると新築はあまり選ばれません。こうした時代にあっては、設計の仕事を待つのではなく、自分で何かコトを起こした方がいいのではないかと考えました。リノベーションは使い方を考えて、中身のコンテンツを生み出すこと。自らプロジェクトを作り出して、自分の仕事は自分で作り出せる人になってほしいと思っています。」(嶋田さん)
らいおん建築事務所のホームページにある、ミッションステートメントには「現代の日本社会の様々な問題を、建築、まちづくりをはじめとした、あらゆる「モノ・ゴト」のデザインを通じて解決を目指す。」という一文があります。デザイン的なアプローチを前提に講義を思い返すと、学びがさらに深まると感じました。

これまでの講義