プロジェクトスクール@3331レクチャーvol.15

コミュニティデザイン


プロジェクトスクール@3331第2期、第15回目の講義はコミュニティデザイナーの山崎亮さんにお越しいただき、「コミュニティデザイン」をテーマに講義を行いました。
プロジェクトスクールでは、地域とそこに暮らす方々と向き合いながら、プロジェクトの企画・実践に必要なリサーチ力と、形にするための立案力を身につけるため、カリキュラムの中に、地方都市に赴き合宿形式で行うリサーチプログラムがあります。この回ではそのような場合にこそ意識しておきたい、地域の人々と関わる上での欠かせない視点や考え方、そしてプロジェクトをつくるということの本質について、ワークショプを交えて学びました。

【実施概要】

日 時: 2018年1月23日(金)

講 師: 山崎 亮 氏(コミュニティデザイナー/studio-L代表)

参加生徒数: 23名

 

主役は住民。人が本気にならなければ地域は元気にならない
「常に住民参加型で場を作るのが僕らの仕事です(山崎)」

全国各地で人が繋がる仕組みづくりに携わり、これまで200もの住民参加型プロジェクトを支援してきた山崎さんですが、数ある事例の中から今回まず紹介して頂いたのは、商店街のおじさん30人から始まったという「観音寺まちなか再生計画」プロジェクトです。お店の中にお店が入るという「ショプインショップ」が形になるまでのエピソードを通じ、地域の人々との関わり方や、考え方、進め方などを見ていきました。

山崎さんが仕掛けるプロジェクトの特徴は、すべて住民参加型であること。
「我々は、僕らがなにかをやって差し上げるようなプロではありません。僕らが地域に行って地域を元気にしてあげる、専門家やデザイナーを用意して地域をかっこよくデザインしました、商品開発をして売上が上がりました、というような仕事ではないです。これまで外部の人に頼んで一時的に集客ができたり、売上は上がったけど飽きられて駄目になる、ということが繰り返されてきました。それを見て”これって本質的じゃないな”と、思うようになったんです。だから、何をやるにしても地域の住民の方々に集まってもらって、その人たち自身が何かをやっていく話し合いの場をサポートする。地域の人が本気になってくれないと地域は元気になりません。」(山崎さん)
あくまで住民が主体。だからこそ、山崎さんがこれまでに関わったプロジェクトはすべて違うそう。

コミュニティデザイナーの仕事は、依頼主である自治体の問題を住民自身が解決に導くことです。例えば、観音寺の商店街ではシャッターを閉めさせないことが、そこの地域に住む人々の生きがいや気力を生み、健康づくりに繋がる。そしてそれが人々の医療費や介護費の削減につながっていく。こういったこともまたコミュニティデザインの隠されたテーマである、と山崎さんはおっしゃいます。

 

主体同士の話し合いが問題に関する理解を深め、地域を個性的かつ魅力的にしていく
「観音寺まちなか再生計画」飲み好きな店主たちが商店街を盛り上げていくエピソードに引き込まれる

山崎さんのワークワークショップでは、とにかく徹底的に主体となる人達同士が対話するということを促進します。その結果、例えば観音寺のプロジェクトでは、「もはや商店街は中心市街地になくてよいのではないか?」という未来を連想させるような問いが商店主の口から飛び出したそうです。そもそも中心市街に商店が軒を連ねたのは、ここ50年くらいの話。時代が変化し、もしかしたらこの先、「中心市街地には病院」とうのが当たり前になるかもしれません。「商店街に人がいない」から始まった観音寺のプロジェクトは、「次の世代へ向けた中心市街地の役割はどうあるべきであるか?」まで視野を広げ、いまもその活動が続けられています。対話を繰り返し、継続する場をつくることで、主役たち自身がその問題の理解を深め、濃い密度で解決策に取り組み、自らの活動を更新していくことができる。それを手助けするのがコミュニティデザイナーの役割だということが分かります。

 

地域に入る時に欠かせない視点
幸せな生き方とは? ワークショップでは伝わりにくい概念を図や絵で表現し人に伝えた

講義の最後には、山崎さんがここ最近モヤモヤと考えているという、コミュニティデザインの立場から見る人の生き方や幸福感について、ワークショップ形式で考えました。私たちが、誰かからモノやサービスをどうやって手に入れているのか?を考えたとき、
①知らない人からは現金で
②顔見知りの人からは現金+信頼で
③よく知っている人からは信頼で
の3つのプロセスでそれらを手に入れていることがわかります。私たちはこれから①のために時間を費やし働き現金を貯金して生きるか、それとも③の生活から信頼や繋がりを貯金していくのか。繋がりや信頼の中がどのくらい生かされて、どれくらいは現金を使って生活しようと思うのか。ワークショップでは、この少し分かりづらい概念をどうやって人にわかりやすく伝えるかということをグループ形式で話し合い、発表しました。

 

「地域に行ったときは金儲けさえできれば、稼げれば幸せになれるのか?という事を地域の人たちにとことん考えてもらうこも大切です」(山崎さん)

「我々は地域に行く時にどうしても無意識に東京の価値観を持っていってしまいがち。地域には地域の倫理があります。人間関係の中にある重要なやりとりとして信頼資本のようなものがあって、これは生活の大部分を貨幣資本でやり取りしようと思っている人たちが忘れているか、いままで削ぎ落としてきてしまったようなものです。どのくらい地域で信頼を得ているのか、信頼資本を貯めているのか、繋がり・絆貯金みたいなものをちゃんと蓄えているかによって、その人の生活の安心感や土台が担保されている。そういうものを減じることなく地域づくりを進めていくために、僕らはいったい何をするべきでしょうか。」(山崎さん)

かつて農山漁村に住む人と都市に住む人の割合は8:2でしたが、戦後から割合が逆転し、いまやその比率は2:8となりました。国が加速度的に進めた高度経済成長を経て、私たちの今の生活があります。「そこには自分たちが本当に納得できる幸せがあるのかどうか、私たちは常にチェックしながら生きていく必要があると思います。」(山崎さん)

 

人のつながり方さえも変化する現代で、プロジェクトをつくり、継続させていくこと。そこで絶対に忘れてはいけないポイントをしっかりと意識に刻み込んだレクチャーとなりました。

 

Topic:
都会の価値観をもっていかないことを常に意識する

山崎さんがプロジェクトを動かしていく上で意識していることがあります。それは、「都市的な考えをそのままもっていくようなワークショップはしない」ということ。「プロジェクトを考える時に、お金がたくさんまわるとか、金でやりとりすることを無意識のうちにベースにやってしまう。もっと言うと都市的な生き方みたいなものをベースにして地方にプロジェクトを持っていくと何かが食い違って、”私たちそれを頑張りたいわけじゃないんだよね”と思うようなことをがあるんじゃないかってことを最近はよく考えます。とにかく僕らはわかってないんだから、向こうの人たちの生活をじっくり聞くところからスタートしなければなりません。聞く所からスタートして、向こうが本当に求めている生き方を発見してから話をしないといけません。僕らは無意識のうちに都市的な価値観でプロジェクトを進めてしまっている危険性がありますから。」(山崎さん)

これまでの講義